■循環型社会形成推進法案(公明党案)と循環型社会基本法案(環境庁案)の対照表

循環型社会形成推進法案(公明党案) 循環型社会基本法案(環境庁案)
名称 循環型社会形成推進法案(仮称) 循環型社会基本法案(仮称)
位置付け及び環境基本法との関係 この法案は、環境基本法の基本理念を具体化する行動計画法。立法府である国会が行政府である政府に対して、基本理念、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務、基本方針を示して、循環型社会形成推進計画を策定させ、循環型社会の形成のために必要な諸施策の立案、執行を総合的・計画的に行うよう義務付けるもの。 ○この法案は、緊急の課題である廃棄物・リサイクル対策の総合的・計画的な推進の基盤を確立するもの。
これにより、
・廃棄物・リサイクル対策の整合性ある推進の枠組みが整備され、
・個別法に基づく関連施策は、基本法に沿って総合的、計画的に遂行され、
・加えて、国、地方公共団体、事業者、国民の循環型社会構築に向けて整合性ある取組の方向が示される。
○環境基本法に基づき策定された環境基本計画において「循環」が環境政策の長期目標の一つとして規定されている。
・「経済社会システムにおける物質循環」の確保とそのための廃棄物・リサイクル対策の総合的展開は緊要の課題。
・このため、廃棄物・リサイクル対策の基本的枠組法として循環型社会基本法(仮称)を制定。
個別法との関係 ○必要な個別法は、熟したものから、循環型社会形成推進計画のための具体的指針、計画の策定を待つことなく、制定する。
○循環型社会形成推進計画の具体的指針の勧告、計画策定の際には、全ての諸施策を洗い直して、既に制定された法律については改正を、まだ制定されていない事項については新規立法の立案等を行い、推進法の規定により個別法等の諸制度を確実に整備する。
○計画の進行状況の監視、計画の見直し等により、諸状況の変化に即応して個別法等を見直す。
○関係法律と一体的な整備を図ることにより、取組の実効性を確保する。
○個別法に基づく関連施策は、基本法に沿って総合的・計画的に遂行される。循環型社会基本法は、関係法と相まって、実効ある廃棄物・リサイクル対策を総合的に推進。
目的 この法律は、国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保していく上で、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を実現することの緊急性にかんがみ、循環型社会の形成について、基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定め、並びに必要な体制を整備することにより、循環型社会の形成を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。(第1条) 循環型社会の構築に関して、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにし、及び政府による計画の策定等施策の基本となる事項を定めるもの。
基本理念 循環型社会形成の推進は、人類の存続と繁栄が自然の循環の範囲内において人類以外の生物との共生によって図られることをかんがみ、すべての人の公平な役割分担の下に、環境から得られる資源等を用いた人間の活動を、自然の循環を維持し、損なわず、及び回復しつつ、より効率的に行うことができる社会経済構造への転換を促し、もって環境への負荷の少ない持続可能な社会を形成することを基本として行われるものとする。
(第3条)
[循環型社会の構築]
循環型社会の構築のための活動が、すべての関係者の公平な役割分担の下で自主的かつ積極的に行われるようになることによって物質循環の促進が図られ、これを通じた環境への負荷の低減により、健全な経済の発展を図りながら持続的に発展可能な社会の構築を推進することを明らかにする。
[物質循環の確保のための対策及びその優先順位]
(推進法案では「基本方針」に位置付け)
物質循環の確保の観点から 廃棄物・リサイクル対策を一体的に推進するため、
・発生資源の取り扱いに関わる対策
・原則的な優先順位、
を明確化。
責務 国及び地方公共団体の責務(第3条)(略)
事業者の責務(第4条)(略)
国民の責務(第5条)(略)
○廃棄物・リサイクル対策を一体的に推進する観点から、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を体系化。
○事業者及び国民の責務には、排出者又は生産者としての責務を位置付けて明確化。
基本方針または推進すべき施策の性格 ○循環型社会形成の推進に関する基本方針(第2章)は、政府が、第19条の「講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた循環型社会形成推進計画」を作成するに当たっての基本方針。
○政府は、この循環型社会形成推進計画に示した措置を、一定期限までに、個別法の企画立案を行うこと等により、実行。
○万が一、実行できない場合には、政府はその理由を国会に釈明する義務。
○このように、基本方針は、訓示的規定ではなく、推進計画に反映され、一定期限までに、個別法の改正・制定等の具体的施策として具体化される性格のもの。法律上、この旨を明記。
○推進すべき施策はプログラム規定。
○国は、循環型社会基本法に示す措置のうち、個々の物品の適正処理やリサイクルの実施状況等にかんがみて国として手当てすることが必要と考えられる措置を選択して、規制、誘導、啓発助言等の措置を講ずることとする。
○具体的な実施は、各個別法等において担保。
基本方針または推進すべき施策の内容 [自然の循環の維持](第7条)
○自然の改変は、生物種の絶滅をもたらさないよう特別の配慮、自然の循環を損なわない範囲内のものとかつ、最小限にとどめ、改変される自然には代償措置等により機能を回復。
○自然エネルギーをできる限り用いること、再生のための措置を講じて再生可能自然資源を用いること。
○農林業に関する活動は、その環境保全機能を維持増進する措置を講じて、維持的発展を図ること。

[不用物の排出抑制と環境資源の循環利用](第8条)
○気体、液体、固体、又は熱の形態による不用物の環境中への排出は最小限にすること。
○不用物に関する活動の優先順位を次のとおり定める。
具体的適用に当たっては、技術的可能性、経済的及び社会的費用とその他の事情を考慮。
(1) 排出抑制
(2) 再使用
(3) 資源としての再利用
(4) 熱としての再利用
(5) 廃棄物としての処分
[物質循環の確保のための対策及びその優先順位]
(基本法案では「基本理念」に位置付け)
物質循環の確保の観点から廃棄物・リサイクル対策を一体的に推進するため、
○発生資源の取り扱いに係わる対策
○原則的な優先順位を明確化。
(1) 原材料の効率的利用等による発生抑制(リデュース)
(2) 使用済み製品又はその中から取り出した部品等をそのまま使用する再使用(リユース)、使用済み製品等を再生して原材料として利用する再生利用(マテリアル・リサイクル)
(3) 環境保全の万全を期した適正処分
リサイクルできないときは最終処分の前にエネルギーとしての利用(サーマル・リサイクル)に努力。
[排出抑制](第9条)
製造された物品を販売せずに不用物として排出しないよう、また、副次的に得られた物品を不用物として排出しないようにすること。
[排出者に係わる措置]
物質の循環を基調とした社会を構築するため、排出者に対し、その立場に応じて、(1) 排出抑制(リデュース)、(2) 再使用(リユース)・再生利用(リサイクル)、(3) 適正処分がなされることとなるように、規制、啓発等その他必要な処分を講ずる。
[不用物の再使用](第10条)
中古品市場の健全な発展及び活性化。非営利団体の行うフリーマーケットへの特別の配慮。
[排出者に係わる措置](略)
[再利用及び処分に当たっての無害化処理](第11条)
○再利用及び処分に当たり、人の健康及び生態系に対して有害な影響を及ぼさないようにするとともに、環境への負荷を最小限にすること。
○有害な影響について、化学物質による現在及び将来の影響、化学物質過敏症の人に対する特別の配慮。
[排出者に係わる措置](略)
[製造者及び供給者の設計等に当たっての責任](第12条)
○動産及び不動産の設計、製造、加工、販売その他の事業活動を行うに当たり、動産及び不動産に関して、
(1) 不用物の排出抑制
(2) 不用物の再使用、再利用、廃棄物として処分される場合に、環境への負荷が最小限になるようにすること。
○排出抑制に資するため、製品寿命の長期化設計、部品供給の長期継続に、特に配慮。
[リサイクルの推進に係わる措置]
適正処理やリサイクルの実施状況を考慮して必要と考えられる場合に、物品の生産、加工、販売、消費、処理等にかかわる者による適切な役割分担の下でのリサイクルの推進を図るため、個々の物品の再生可能性や流通実態等を勘案して、以下を推進。
○物品の耐久性、リサイクルの容易性、環境負荷の低減等の自己評価を通じた発生抑制・リサイクル・適正処理の確保
○発生資源の引取、引渡ルートの整備及びリサイクルの実施
○物品等に関する情報
[環境配慮製品等の優先的購入及び使用](第13条)
○国は、環境配慮製品等を優先的に使用。
○地方公共団体、事業者、国民が環境配慮製品等を優先的に購入・使用するよう措置。
[需要及び供給の増進]
リサイクルが社会に根付くためには、リサイクル市場の育成が重要であることから、国等によるリサイクル品の率先購入・使用等を推進。
[排出者の責任](第14条)
○排出事業者(不用物を排出する事業者)の責任。
・排出する不用物に関し、人の健康及び生態系に対して有害な影響を及ぼさないよう、環境への負荷を最小限にすること。
・民事上の契約等による排出事業者の責任免除を制限。
・排出事業者の責任を確保しつつ、国及び地方公共団体による必要な施設を整備。
○国民の責任
・排出に当たって、再利用、再使用、廃棄物としての処分を容易にするようにすること。
・地方公共団体及び事業者による施設整備等を促進。
[環境保全上の支障の防止]
物質の循環に伴って発生する環境への負荷が低減される社会を構築するため、発生資源の処理に伴う公害の防止のための規制を実施。
[発生資源の適正な処理]
発生資源の適正な処理を確保するため、処理のあり方に係る枠組みの整備や技術的支援等により、地方公共団体における廃棄物の適正処理等を推進。
[原状回復の責任]
○不用物廃棄者等(不用物の廃棄者、排出事業者、不用物となった物の製造者)は、不用物による人の健康・財産の侵害、環境の汚染が生じた場合、次の費用を負担。
(1)その被害の補償
(2)不用物による影響の範囲及び程度に関する調査
(3)不用物の除去
(4)現状の回復
○個々の不用物廃棄者等が倒産したり、資金力がない場合等にも、費用を負担させるために、不用物廃棄者等による基金、課徴金、保険制度その他の制度を整備することその他必要な措置を講じること。










[経済的措置]
循環型社会の構築に向けて事業者を誘導していくため、負担を課す措置(例:ごみ処理手数料)を実施。
[循環型社会形成の推進に寄与する事業の振興](第16条)
○事業者の創意工夫を尊重しつつ、情報の提供、資金の確保その他必要な措置を講じること。
○中小企業者に対する特別の配慮をすること。
[需要及び供給の増進]
リサイクルが社会に根付くためには、リサイクル市場の育成が重要であることから、リサイクル事業者の育成等を推進。
[経済的措置]
循環型社会の構築に向けて事業者を誘導していくため、経済的助成(例:融資等)を実施。
[科学技術の開発等](第17条)
循環型社会の形成を推進するため必要な措置を講じること。
(1)科学技術の開発及び普及
(2)人材の育成
(3)事業者及び国民の活動の支援
(4)施設整備
(5)その他
[循環型社会の構築に向けての基礎的取組]
○調査の実施
○科学技術の振興
○施設設備
○情報の収集・整理・提供
○国際協力
○教育・学習の振興
○民間団体等の自発的活動の支援等
[特別の配慮](第18条)
施策の具体化に当たって、次について特別に配慮。
○廃棄物とリサイクルについて、これを包括し、等しく適用できるような個別法、例えば、ドイツの廃棄物・循環経済法のような法律の整備。
○政府の施策を総合的・計画的に推進するための行政機関の整備。

循環型社会形成推進計画または基本的な計画 [循環型社会形成推進計画の作成](第19条)
○循環型社会形成の推進に関する基本方針に即し、講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた計画。
・基本方針に即した事項を具体的に各号に列挙。
・前各号の施策の目標及び効果その他政策評価に必要な事項。
[計画とそのフォローアップ]
○循環型社会の構築を推進するための基本的な計画を策定。
○具体的には
・循環型社会の構築に向けた基本的な目標を位置付け、
・国、地方公共団体、事業者及び国民のそれぞれ講ずべき基本的事項を明確化。
計画策定手続き ○循環型社会形成推進委員会の所掌事務(第24条)
・委員会は、平成14年4月1日までに、計画作成のための具体的な指針を内閣総理大臣が勧告。
○勧告の手続き(第25条)
・計画の案についての意見の聴取等(第20条)を準用し、パブリックコメント実施。
○計画の案の作成の指示(第26条)
・内閣総理大臣は、勧告を受けたときは、環境大臣に計画の案の作成を指示。
○循環型社会形成推進計画の作成(第19条)
・環境大臣は、平成15年10月1日までに、関係行政機関の長の協力を得て案を作成し、閣議決定。
○計画の案についての意見の聴取(第20条)及び計画の進捗状況情報の公開(第22条)
・計画の案の作成の際、諸施策の見直し等に関する情報をインターネットで公表し、パブリックコメントを実施(法律に明記)。

計画の実行 [循環型社会形成の目標時期](第21条)
○既存の個別法を含む諸施策をすべて見直し、平成17年4月1日目標として、個別法の改正、新法の制定など必要な措置を講じる。
○遅くとも平成21年1月5日以内に、できれば平成20年4月1日を目標として、必要な措置を施行。

計画策定・実行の担保措置 [計画の進捗状況情報の公開](第22条)
○施策の見直し、措置の進捗状況の情報を公表。
○環境白書により、毎年度、国会に報告。
[国会に対する釈明](第34条)
委員会、環境大臣、各省大臣、内閣総理大臣は、期限までに、実行できなかった場合には、両議院に出席して、その理由を具体的に述べて釈明する義務。
[計画とそのフォローアップ]
実施状況を各年ごとにフォローアップ。
計画の見直し [循環型社会形成推進計画の作成](第19条)
計画は、必要に応じて、見直し、改定する。

第三者的機関 [循環型社会形成推進委員会](第23条)
○内閣府に循環型社会形成推進委員会を置く。
○委員任命の際、委員は国会で見識を陳述する機会。
[委員会の所掌事務](第24条)
○循環型社会形成の推進に関する基本的事項を調査審議し、計画作成のための具体的な指針を勧告。
○施策の実施状況を監視し、内閣総理大臣に意見具申。

その他
[事業者の取組]
事業者による循環型社会の構築に向けた自発的な取組の推進、情報の提供を行うこと等によって民間団体等の自発的活動に協力すべきこと、などを取組の方向として明確化。
[地方公共団体の措置]
地方公共団体は、その役割の重要性を踏まえ、循環型社会の構築に関して、国に準じた施策及び地域の自発的・社会的条件に応じた施策を総合的・計画的な推進を図りつつ実施すること等を規定。